ニュースの概要
信用情報大手のExperianは、第50回の自動車業界シンポジウムで米国の自動車金融の現状を説明した。報告によると、EVの販売に占めるリース比率は2023年の約62%から現在は約32%へ下がった。リース市場全体に占めるEVの割合も、2023年の25%から約10%まで縮んでいる。一方で、リース全体の比率は23〜24%前後で推移し、コロナ禍前と比べて大きく変わっていない。つまり、リース離れが起きたのではなく、EVだけがリースから離れたことになる。自動車金融そのものは底堅く、変化は車種ごとの資金調達の選び方に表れている。
引用元: 米国でEVリース比率が低下、Experianが自動車金融市場の動向を説明(Investing.com)
分析・見解
EVだけが抜け落ちたリース市場の構図
このニュースの肝は、リース全体が横ばいなのにEVの比率だけが急落した点にある。全体が23〜24%で安定しているなら、消費者がリースを嫌いになったとは言えない。ガソリン車やハイブリッド車のリースは、従来どおり使われているはずだ。EVリースの割合が25%から約10%に縮んだことは、EV専用の事情が働いたことを示している。
たとえば2023年は、リース経由なら購入者の所得や車両価格にかかわらず税控除を受けやすい仕組みが話題になった。リース会社が控除を受け、その分を月額料金から値引く形が広がった。62%という高い比率は、この制度の追い風が生んだ面が大きい。
残価の読みにくさが貸し手を慎重にした
リースは、数年後の車の価値(=残価)を貸し手が予想して月額を決める商品である。ガソリン車なら中古相場の蓄積があるため、予想は比較的当たりやすい。ところがEVは、新型が出るたびに電池性能と航続距離が大きく上がる。さらに新車価格の値下げも続いた。すると、数年前に高く見積もった残価が、返却時に下回る事態が起きやすい。
実際に米国では、返却されたEVの中古価格が想定より下がり、貸し手が差額を負担する例が報じられてきた。貸し手は残価の設定を低めにし、月額が上がる。月額が上がれば借り手の魅力は薄れる。この循環がリース比率を押し下げたと考えられる。
購入とローンへ流れる動きをどう読むか
リースが減った分は、現金購入やオートローンに移ったと見るのが自然だ。EVを長く乗りたい層は、残価の不確実さを自分で抱えてでも、走行距離の制限がない購入を選ぶ。電池の劣化が気になる人も、リースなら返却できる利点を持つが、料金が高ければ割に合わない。
独自の視点として注目したいのは、リース比率の低下が、EV市場の冷え込みよりも、補助金頼みの需要が自然な水準へ戻る過程を映している点だ。62%が異常に高く、32%が通常の姿に近いのかもしれない。数字の減少だけで悲観するのは早い。
今後は制度と中古価格の安定が分かれ目になる
今後の鍵は二つある。一つは税制の優遇がどう変わるか。もう一つは、EVの中古相場がどこで落ち着くかである。相場が安定すれば残価の予想精度が上がり、貸し手は月額を下げられる。その時はリースが再び伸びる余地がある。逆に新型投入の速度が落ちなければ、リースは限定的な位置づけにとどまるだろう。
ビジネスへの影響
車両調達の方法を車種ごとに分けて考える
社用車や営業車にEVを入れる企業は、リースと購入を一律に決めない方がよい。残価が不確かな現状では、リース料金に貸し手のリスク上乗せが入っている可能性がある。契約前に、残価の設定額と、返却時に差額を誰が負担するのかを確認したい。走行距離が多い用途は、制限のない購入の方が総額で安くなる場合が多い。
金融商品を扱う事業者が見直すべき点
リースやローンを提供する事業者は、EV向け商品の設計を分けるのが現実的だ。残価を低めに置いた上で、期間を短くした商品や、中古相場に連動して料金を調整する商品が考えられる。借り手の信用審査では、EVの価値の下落幅を織り込んだ評価も必要になる。信用情報の会社が示すデータは、その材料になる。
日本の企業にとっての参考点
日本でも補助金に支えられたEV需要が続いている。補助が縮小した後の販売や金融の動きは、米国の経験が参考になる。短期の数字に一喜一憂せず、制度の変更と中古価格の動きを三か月ごとに見直す体制を作りたい。
